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記憶のカケラ





毎年夏になると思い出す。




毎年秋になると思い出す。





季節の変わり目・・・・・・




風の匂いの変化に・・・・・・



私の胸の奥が敏感に反応する。





秋の切ない風と共に、蘇る記憶。





電車の中の高校生達は、サッカーの話に夢中だった。






「俺のパスさえ、通ってたらなぁ」




「俺も、後半バテバテやったし」






涼くん。





あなたも、あの頃の気持ちをまだ持ち続けていますか。







思い出す。




最後の試合の帰り道。






サッカー部員みんなで中華料理を食べに行った。




彼女を連れてきていたのは涼くんともう一人。





涙で料理の味が


しょっぱかった。




みんな泣いていた。



誰も試合の話を口にしなかった。








無理してその場を盛り上げる涼くんが



心から愛しく感じた。






笑わなくていいよ。


泣いていいよ。









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