71
記憶のカケラ
毎年夏になると思い出す。
毎年秋になると思い出す。
季節の変わり目・・・・・・
風の匂いの変化に・・・・・・
私の胸の奥が敏感に反応する。
秋の切ない風と共に、蘇る記憶。
電車の中の高校生達は、サッカーの話に夢中だった。
「俺のパスさえ、通ってたらなぁ」
「俺も、後半バテバテやったし」
涼くん。
あなたも、あの頃の気持ちをまだ持ち続けていますか。
思い出す。
最後の試合の帰り道。
サッカー部員みんなで中華料理を食べに行った。
彼女を連れてきていたのは涼くんともう一人。
涙で料理の味が
しょっぱかった。
みんな泣いていた。
誰も試合の話を口にしなかった。
無理してその場を盛り上げる涼くんが
心から愛しく感じた。
笑わなくていいよ。
泣いていいよ。