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「歩こっか」



「うん」






駅から家までの45分の道のりを、2時間以上かけて帰った。






ゆっくりゆっくり。




今までのサッカー人生を振り返るかのように。





握られた手は、1度も離されることがなかった。





月が不気味な色をしていたことを覚えている。





真夏のわりに涼しい夜だった。






「はぁ・・・・・・終わったんかぁ」





涼くんは夜空を見上げてそう呟いた。






そのまま、その場に座り込んで・・・・・・



我慢していた涙を流した。






「いやや・・・・・・俺、終わりたくない。もっとサッカーしたいって・・・・・・」






涼くんの涙が月明かりに照らされて




キラキラと輝く。







2人でしゃがみ込んだまま、泣き続けた。





何も言えなかった。






長かった涼くんのサッカー人生が今、終わったんだ。






サッカーだけを愛し続けてきた涼くんからサッカーを奪ったら・・・・・・



どうなるんだろう。






進路。



就職。





現実的な言葉ばかりが私達の頭の上にのしかかる。





付き合ってからずっと・・・・・・正直言えば、サッカーを恨んでいた。





毎日毎日、サッカーの練習で夜遅くまで帰らない涼くん。



休みの日も部活があって、デートらしいデートもできなかった。






部活帰りのクタクタになった涼くんに、



「もっと会いたい」



なんて



言えるわけもなく。









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