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涙のキス
私達は離れたくなくて、帰ろうとしても何度も戻る・・・・・・
こんなにも一晩一緒にいたいと思ったことはなかった。
一人にするのが心配だった。
泣きながら帰宅した私に母が言った。
『今、一番辛いのは涼くんだよ・・・・・・』
眠ろうとすると今日の試合のことが頭に浮かび、
夢の中では試合は何度もやり直され、朝方・・・・・・決勝まで進んでいた。
翌日、朝から涼くんが家に来た。
目を真っ赤にした涼くんは、部屋に入るとすぐに私を抱きしめた。
「昨日の夜、めっちゃキスしたかった・・・・・・」
普段は絶対にそんな照れくさい言葉なんて言えないのに。
そのままベッドに倒れこんだ私と涼くんは、キスをした。
キスの途中で、涼くんは涙を抑えることが出来ずに涙を流しながらキスをした。
鼻と鼻をくっつけたまま、ずっとくっついて泣いていた。
「俺のせいや・・・・・・俺、動かれへんかってん。緊張して、焦って・・・・・・」
「そんなことない。一番声出してたやん」
「俺、みんなの代表として試合に出さしてもらってたのによぉ。出られへんヤツいっぱいおったのに、俺・・・・・・申し訳なくて・・・・・・俺のせいで負けた」
昨日の夜、涼くんがどれほど一人で苦しんだのかが伝わってきた。
一人で、試合を振り返り・・・・・・どうしようもない悔しさを自分のプレーにぶつけた。
夕方まで、ずっとくっついて泣きながらキスばかりしていた。