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何かが変わる
その当時はわからなかった。
今考えると
やはりこの頃が私達の分岐点だったのかもしれない。
部活がなくなり、会う時間が増えた。
涼くんはバイトをしたいと言い出し、興味のなかったお洒落にも気を使い出した。
何を着ていてもかっこいい涼くんだったけど、
私はジャージや、Tシャツ姿の涼くんが好きだった。
過去に捕らわれていただけなのかもしれない。
友達と、高そうな服を買ってきて私の前で着替えた。
5着くらいをファッションショーのように、何度も着替えた。
「めっちゃ似合う~。かっこいいわぁ」
そう言いながら、胸の奥のほうが苦しくて仕方がなかった。
やだ。
やだよ。
これ以上かっこよくならないで。
私だけの涼くんでいて。
なんでそんなにかっこいいの?
似合いすぎだよ。
そんな涼くんを女の子が
ほっとくわけない。
不安
不安
不安。
嫉妬。
ジェラシー。
独占欲。
部活を終えてからの涼くんはどんどんかっこよく、お洒落なイマドキの男へ変貌して行こうとしていた。
眉毛を整え、指輪を付け・・・・・・
泥にまみれていた涼くんとは別人だった。
今ならわかる。
涼くんもどうしていいのかわからなかった。
サッカーがなくなった生活の中で、他に夢中になれるものを探していたんだよね。