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結局


不安に負けた。





『電話するって言ったんやから、待っときや』



親友のミキのそんな言葉も、待つ切なさに負けそうな私には届かなかった。





電話をかけたのは私だった。



部活の終わる時間を計算し、ちゃんとご飯を食べたであろう時間に電話をかけた。





今から思うと


涼くんもわからなかったんだと思う。



『付き合う』ってことが。





私を切なくさせてることも寂しくさせてることも



伝えなければ、涼くんには伝わらないんだ。





私は文句の1つも言えないまま、



『部活大変なん?』



『うん…でもめっちゃ楽しい。ごめんな、電話できんかって』




その一言で涙が出た。



ちゃんとわかってくれていた。



電話しなきゃって思ってくれてたことが何よりも嬉しかった。



『暗記するから、番号言ってや』



また、涙・・・・・・



バレないようにぶっきらぼうに電話番号を言う。




『覚えたで』




覚えたで。


覚えたで・・・・・・






ずっと片思いだった涼くんが


私の電話番号を覚えてくれた。




『自分めっちゃおもろいなぁ!』




自分とは、私のこと。



関西では、相手のことを『自分』って言う。





おもろいって!!




5年間ほとんど会話したことがなくて・・・・・・



自分を知ってもらうこともできなかった。





『めっちゃ天然やん!』




どんどん私を知ってもらえてる気がして、嬉しくて涙が止まらなかった。










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