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私は質問攻めにされることを予想して、家に入るとすぐに自分の部屋に駆け込んだ。
そして、
窓を開けた。
何度もここから見た涼くんの姿を・・・・・・
この部屋から見える私の町と涼くんの町を繋ぐ橋を
じっと見つめる。
走ってから帰るって言ってたなぁ。
10分くらいずっと見てた。
すると・・・・・・
遠くに見えたんだ。
私じゃないと
絶対に見つけられないくらいの
小さな小さな涼くんの姿。
ハッキリと見えた。
軽やかに走る涼くんが橋を渡るんだ。
さっきまで隣にいたんだ、涼くんが。
見て。
あのかっこいい人、さっきまで隣にいたんだよ!
見て。
部活でいっぱい走ってるのに、帰ってからもトレーニングしてるんだよ。
かっこよすぎるよ。
月明かりの下の涼くんの笑顔が何度も何度もまぶたの裏に現れる。
今日の一日の出来事で
私の5年間の想いを倍にしちゃうくらいの
『好き』
が芽生えてしまった。
どこかで誰かが囁く。
―――これ以上好きになると辛いよ。
―――これ以上好きになると、耐えられなくなるよ。
―――いくら好きになっても、涼くんの1番にはなれないんだよ。
・・・・・・涼くんの1番は今までもこれからも『サッカー』なんだから。