71




私は質問攻めにされることを予想して、家に入るとすぐに自分の部屋に駆け込んだ。




そして、



窓を開けた。






何度もここから見た涼くんの姿を・・・・・・



この部屋から見える私の町と涼くんの町を繋ぐ橋を


じっと見つめる。




走ってから帰るって言ってたなぁ。


  

10分くらいずっと見てた。




すると・・・・・・




遠くに見えたんだ。






私じゃないと



絶対に見つけられないくらいの



小さな小さな涼くんの姿。





ハッキリと見えた。




軽やかに走る涼くんが橋を渡るんだ。




さっきまで隣にいたんだ、涼くんが。





見て。




あのかっこいい人、さっきまで隣にいたんだよ!





見て。



部活でいっぱい走ってるのに、帰ってからもトレーニングしてるんだよ。






かっこよすぎるよ。




月明かりの下の涼くんの笑顔が何度も何度もまぶたの裏に現れる。






今日の一日の出来事で



私の5年間の想いを倍にしちゃうくらいの



『好き』



が芽生えてしまった。












どこかで誰かが囁く。






―――これ以上好きになると辛いよ。




―――これ以上好きになると、耐えられなくなるよ。




―――いくら好きになっても、涼くんの1番にはなれないんだよ。





・・・・・・涼くんの1番は今までもこれからも『サッカー』なんだから。

















< 49 / 71 >

この作品をシェア

pagetop