雨空と薔薇
スーツが
恐ろしく
似合わなかったのは、
サイズが
あってなかったせいなのだ。
しかし、
特殊といえば
特殊なこのサイズは、
値段が懐にとっても痛い
ものだった。
笑美は雨の中
ゆっくりと歩いて
ホテルの中へ
入った。
結婚式を
終えた姉が
明日の新婚旅行を
前に宿泊する
予定のホテルだった。
不審げに笑美を見た
フロントのお兄さんに、
笑美はニッコリと
微笑んだ。
笑美の手元には
真紅の薔薇だけで
出来た花束が
もたれてある。
お兄さんも、
ニッコリと
微笑み返してくれた。