わたしの恋愛対象 ~あなたとの場合限定~
「…蘭子は…高校三年生でっ…1番楽しい時なのに…遊ばないで…毎日毎日バイトして…私が体弱くて働けないからっ…少しでも蘭子が楽になるかもって…」


母が私にすがりついてきた。


私の家は母子家庭。
体が弱い母の代わりに私が働いていた。


「お母さん…」


私は今にも倒れてしまいそうな母の体を支えようと近寄った。


「いい加減にしろよ!」


ガンッ


ガシャガシャガシャ


待ちきれなくなった取り立て屋が、ドアノブを無理やり回す。
ドアは今にも開きそうだ。


「ごめん…ごめんなさい…ごめん」


母は謝り続けている。


「いくら…借りたの?」


迫る取り立て屋の恐怖に耐えながら、私は聞いた。


「……」


母は口を開こうとしない。


バンッ


取り立て屋がドアを蹴ってきた。


「お母さん!いくら借りたの!?」


「…ごめんなさい…借りたのは…借りたのはっ!私が借りたのは十万だった…なのに!」


泣きながら母は口を開いた。


「…なのに何?」


母は言葉につまった。
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