四季〜二人で歩む季節〜


「おっ、始まったな。」

「わぁ、すごい。」


花火が打ち上がった瞬間、大輪の花が咲く夜空にくぎづけになってしまった。


体を打つ大きな音と、綺麗な光があたしの思考を奪っていく。


言葉を発する事さえも、忘れてしまっていた。


「ミユ?」


レンの声が耳元で聞こえ、あたしはハッと我に返った。


「どうした?」

「えっ?」

「涙出てるぞ。」


そう言われて、頬に手をあてると涙が指先を濡らす。


「あれ?本当だ。
何で泣いてるんだろう、あたし…。」

「何かあったのか?」

「何にもないよ。」

「そっか。」
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