四季〜二人で歩む季節〜


「…もう渡すお金はない。」


ギュッと握りこぶしを作り、呟くように声を出す。


「えっ?」

「だから、もうないってば!」


瞬間、母親の顔つきが変わった。


「あんたは、あたしが野垂れ死んでもいいって言うの?
あんたとは金輪際、親子の縁を切らせてもらうわ。」


カツカツとヒールの音を響かせて、母親はお店を出て行った。


終わったんだ…。


母親との縁が切れた瞬間、何とも言えない気持ちが胸を締め付ける。


何事かとチラチラ見てくる周りの客を横目に、逃げるようにしてあたしはお店を出た。


苦しくて、うまく息が出来ない。
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