アタシと王子様
「もぅ!痛いんですけど…」
「桃花ちゃんが悪いね」
掴まれた手首はうっすらと赤くなっている。
「ねぇ…俺の噂ってロクでもないでしょ?」
手首をさすりながら突拍子もない事を聞いた先輩に視線を向ける。
「知ってるよ、何だっけな…愛を売る王子様だっけ?」
「いきなり何の話ですか?」
ゆっくり流れていく雲を見上げてハハッと笑う先輩…
「愛を売るって…スゴイよね?売れるのかな?幾らぐらいかな?…そんなの…俺は持ってねぇのに…」
「…持ってないって」
「愛なんて重くて大変そうなモン持ってないよ」
「……先輩」
「あ〜…眠い、ちょっと寝るね?チャイム鳴ったら起こして」
その言葉の意味も先輩の気持ちも聞きそびれたまま、時間は過ぎた。