左手は常闇を這う【短編】


“彼”との付き合いは長く、それこそ物心ついた時分からほぼ同じような時を過ごしてきた訳だったが、だからと云って同じような人間に成長する訳ではなかった。


とてもよく似ている。
しかし、似ているだけで決して同じにはならない。

“彼”の右側は、私の左側によく似ていたし、“彼”の左側は私の右側によく似ていた。
まるで鏡に映ったように。


だが、その程度のものなのだ。




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