Melody Honey
「――悪ィ…」

呟いているような声で、桐生が言った。

「今日は、無理だ…」

私から目をそらすように、桐生が横を向いた。

何も言えない私は、彼を見つめることしかできない。

見つめていたら、
「――出て行ってくれ…」

かすれたような声で、桐生が言った。

うっかりしたら、聞き逃してしまいそうなくらいの小さな声だった。

「――1人にさせてくれ…」

最後の部分は、もう独り言にしか聞こえなかった。
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