Melody Honey
肉食動物――彼を例えるとするなら、まさにそれだ。

獲物を狙う獣のような目に、私は囚われる。

逃げたいのに、その目から逃げることができない。

「少し話をするか?」

桐生が言った。

「ここじゃ、都合が悪いだろ?」

続けて桐生が言った。

確かに、ここだと都合が悪過ぎだ。

私たちの横を通り過ぎて行く人たちが、好奇心半分と哀れみ半分の目で見ている。

それに何より、私には仕事がある。

「――わかりました」

呟くようにそう言った私に、桐生はニヤッと笑った。
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