Melody Honey
「呼べねーの?」

挑発するように、桐生が私に聞いてきた。

いや、呼べないとかそんなんじゃないんだけど…。

「あおい?」

桐生が私の名前を呼んで、カリッと耳を噛んできた。

「――やっ…」

強く噛まれた訳じゃないのに、私の唇から声がもれた。

「呼べよ」

桐生の吐息が私の肌に触れる。

心臓がドキドキと鳴っている。

この音が桐生に聞こえていないだろうか?

「――詩、音…」

彼の名前を呼んだその声は震えていた。
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