Melody Honey
抜けるんじゃないかと言うくらいの強い力で、彼が自分の髪をつかんでいるのがわかった。

「――ショックだった…」

呟いているような声で、詩音が言った。

「自分の部屋に入ると、俺は泣いた。

同時に、俺は思ったんだ」

そう言って詩音は、私から目をそらすようにうつむいた。

「やっぱり俺は、ダメなヤツなんだって。

弟から彼女を奪われるようなダメなヤツなんだって…そう、思った」

私は、目の前にいる詩音を抱きしめたかった。

泣いていると言うように震えている詩音を、今すぐ抱きしめたかった。
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