Melody Honey
たたかれた頬を押さえた詩音が私を見つめていた。

「千晴さんがどんな思いで待っていたのか、わかってるの!?

この雨の中、千晴さんは詩音のことを待っていたんだよ!?

詩音に謝りたいって思っていたんだよ!?」

自分はこんなにもおしゃべりだったのかと思うくらい、唇が動いた。

「ちゃんと謝りたいからって、詩音をずっと待っていたんだよ…」

私の目から、涙があふれてきた。

あふれてくる涙に耐えることができなくて、私はその場に座り込んだ。

「千晴さん、苦しんでいたんだよ…?

ずっと、悩んでいたんだよ…?」

涙が邪魔をして、上手く言うことができない。

すすり泣く私の声が、静かに部屋に響いた。

「あおい」

その声と共に、フワリと私の頭のうえに詩音の手が乗った。

「理由はわかった」

詩音が言った。
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