Melody Honey
「覚えてくれたんだ、詩音」

そう呟いた千晴さんは、何故だか悲しそうだった。

「――嬉しい、ですか?」

そう聞いた私に、
「もちろん、嬉しいわよ」

フフッと、千晴さんが笑った。

「私と詩音の思い出の曲だから」

そう話す千晴さんは、とても嬉しそうだった。

「ねえ、あおいさん」

千晴さんが私の名前を呼んだ。

「今から、詩音と話をしてもいい?」

その瞬間、途切れたようにサックスのメロディーが止まった。

「今から、ですか?」

「詩音が私と話したくないのはわかってる、でも…」

そこまで言った後、千晴さんは隣の部屋に視線を向けた。

「このまま、終わりたくないの

私のわがままかも知れないけど、このままで終わりたくないの」

千晴さんが言った。
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