Melody Honey
それからドアに向かって、
「千晴さんが詩音と話がしたいって、言ってるの」

私は言った。

詩音の様子は、ここではわからない。

どんな顔をしているのかも、ちゃんと話を聞いているのかもわからない。

「詩音は嫌かも知れないけど、ちゃんと聞いてあげて…ね?」

彼から返事はなかったけど、私は1歩横に動いた。

同時に、千晴さんが詩音の部屋のドアの前に歩み寄った。

「――詩音、ごめんなさい…」

千晴さんが言った。

「こんなことを言っても、ただの言い訳にしか聞こえないかも知れない」

そう言った千晴さんの目から、涙がごぼれた。
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