Melody Honey
「私、詩音の思いをちゃんとわかってた。

不器用で、“好き”の言葉を伝えられないような人だけど…私にはちゃんとわかってた」

千晴さんは目をそらすようにうつむくと、
「ごめんなさい、詩音には言い訳にしか聞こえないよね?」

その言葉に、私は胸を締めつけられそうになった。

もう1度千晴さんは顔をあげると、
「でも、これだけは聞いて?」

あげた顔は、涙で濡れていた。

「詩音のこと、好きだった」

千晴さんはドアの前から1歩離れると、
「それだけ言いたかった」

それだけ言うと、千晴さんは背中を見せた。

「千晴さん」

私が声をかけた瞬間、ドアが開いた。

「――千晴!」

出てきた詩音の顔は、泣いていた。
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