Melody Honey
「えっ?」

そう聞き返した私に、
「親父は10年前に、おふくろは6年前に亡くなったんだ」

詩音が答えた。

「そう、なの…?」

そう聞いた私に、
「ああ、そうだよ」

詩音が言った。

「お葬式には、出てないんだ」

そう言った私に、
「言っただろ、久しぶりだって」

詩音が言った。

「そ、そうよね」

そう返事をした私に、詩音が窓の外に視線を向けた。

「じゃあ、私は誰にあいさつをすればいいの?」

詩音は外に目を向けたまま、
「俺の身内で残っているヤツと言ったら、弟くらいだ」
と、独り言のように言った。
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