Melody Honey
「弘前あおい」

上目づかいで詩音が私を見ると、名前を呼んだ。

「俺と結婚しろ」

そのとたん、私の目から涙がこぼれ落ちた。

「何で泣くんだよ!?」

突然泣き出した私に、詩音が驚いたと言うように聞いてきた。

「だって、嬉しいんだもん…」

次々とこぼれる涙は止まることを知らない。

手で何度もぬぐっても、涙はこぼれ落ちる。

「ったく、泣くなよ」

詩音の大きな手が優しく涙をぬぐった。

「泣くほど嬉しいんだから、仕方ないじゃない」

泣きながら私は言い返した。

「こんな時でも言い返す余裕はあるのかよ」

苦笑いをしながら、詩音が言った。
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