Melody Honey
ポカーンと口を開けている私に、桐生はククッと笑った。

「な、何がおかしいんですか!?」

笑われた理由がわからなくて、わたしは半分怒りながら言い返した。

「“恋の味をご存知ないのね”」

桐生が言った。

こ…恋の味って、それは何ですか?

そう思っていたら、
「今、俺が演奏していた曲がそれだよ」

桐生が言った。

「ゆ、ゆー?」

「You don't know what love is.」

堪能とも言えるくらいのスピードで、桐生が言った。

そうだ、この人は渡米した経験があったんだった。

そう思っていたら、
「前にあおいに教えたはずだが、記憶が飛んだなら仕方ないか」

桐生が言った。
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