サイレントナイト~赤くて静かな夜~
「おにいちゃん」
聞き覚えのある声に、オカジマははっと201号室から声のほうに視線をやった。
そこには一台のバイクと、そのヘッドライトの照らす先には小柄な女の子が驚いた様子でこちらを見ていた。
「ユリ子!!」
何度もアイシャドーを重ね塗りした真っ黒な目は、2つのつけまつげでよりいっそう強調されていたが、メイクの下のあどけない顔は、確かにオカジマの妹のユリ子だった。
「何しに来たんだよ」
ユリ子はぐっとオカジマを睨んだ。
「何しにじゃねえよ。
彼氏が死んだんだろ」
「だから何だよ。
あんなくそ野郎知らねえよ」
「困ってんだろ。
うちに帰るぞ」
オカジマもバイクから降りると、ユリ子はオカジマを睨み付けながら、猫のように後ずさった。
「誰が帰るかよ。
くそ看護婦とセックスしてろよ」
「ユリ子が帰ってくるなら姫芽は家に上げねえよ」
「うるせえ!
にいちゃんはユリを捨てたじゃねえか!
今更迷惑なんだよ!」
目に涙をためたユリ子は、そう叫ぶと後ろに停めてあったバイクの後部座席に飛び乗った。
「ねえユリちゃん、あれって西関東最大の暴走族元リーダー、岡嶋宗一じゃない?
ユリちゃん、妹なの?」
バイクに乗っていた男が、後ろにまたがるユリ子にそっと耳うちをした。
「だったらなんだよ」
そう言ってユリ子は「早くバイクだして」と男を急かした。
「そういうことみたいなんで、すいませ~んお先失礼しま~す」
男はオカジマに会釈をして、ユリ子を乗せたまま漆黒の闇に消えていった。
「ユリを捨てた」
立ち尽くすオカジマの耳に、ユリ子の台詞がいつまでも回っていた。
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聞き覚えのある声に、オカジマははっと201号室から声のほうに視線をやった。
そこには一台のバイクと、そのヘッドライトの照らす先には小柄な女の子が驚いた様子でこちらを見ていた。
「ユリ子!!」
何度もアイシャドーを重ね塗りした真っ黒な目は、2つのつけまつげでよりいっそう強調されていたが、メイクの下のあどけない顔は、確かにオカジマの妹のユリ子だった。
「何しに来たんだよ」
ユリ子はぐっとオカジマを睨んだ。
「何しにじゃねえよ。
彼氏が死んだんだろ」
「だから何だよ。
あんなくそ野郎知らねえよ」
「困ってんだろ。
うちに帰るぞ」
オカジマもバイクから降りると、ユリ子はオカジマを睨み付けながら、猫のように後ずさった。
「誰が帰るかよ。
くそ看護婦とセックスしてろよ」
「ユリ子が帰ってくるなら姫芽は家に上げねえよ」
「うるせえ!
にいちゃんはユリを捨てたじゃねえか!
今更迷惑なんだよ!」
目に涙をためたユリ子は、そう叫ぶと後ろに停めてあったバイクの後部座席に飛び乗った。
「ねえユリちゃん、あれって西関東最大の暴走族元リーダー、岡嶋宗一じゃない?
ユリちゃん、妹なの?」
バイクに乗っていた男が、後ろにまたがるユリ子にそっと耳うちをした。
「だったらなんだよ」
そう言ってユリ子は「早くバイクだして」と男を急かした。
「そういうことみたいなんで、すいませ~んお先失礼しま~す」
男はオカジマに会釈をして、ユリ子を乗せたまま漆黒の闇に消えていった。
「ユリを捨てた」
立ち尽くすオカジマの耳に、ユリ子の台詞がいつまでも回っていた。
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