サイレントナイト~赤くて静かな夜~
表で車の音がしたような気がして、オカジマははっと目を覚ました。

デジタル時計の数字は
「22:07」
居間でテレビをつけたまま寝てしまっていた。

玄関に行ってみたが、父親の気配はなかった。

「おにーちゃん…」

階段を見上げると、目を真っ赤に腫らしたユリ子がうつ向いたまま立っていた。

「父さんまだ帰ってこないよ」

オカジマがユリ子に声をかけると、ユリ子は小さな声で

「お腹すいた…」

と言った。

「ばーか。太巻き先に食べちゃうからだろ」

「だって…」

「降りてこいよ。
何か作ってやるよ」

オカジマが台所を指すと、ユリ子は嬉しそうに階段をかけ降りて来た。

「待ってろよ」

小さなユリ子の頭をポンポン叩くと、オカジマは冷蔵庫の中を見渡した。

梅干し、味噌、イチゴジャム、マヨネーズ、ソース、ケチャップ、日本酒、缶ビール、ソーセージ。

「これじゃお腹いっぱいにならないよな」

オカジマの隣で冷蔵庫を除き込んでいたユリ子は、楽しそうに「うん!」と頷いた。

オカジマが冷蔵庫を開くと、食パンが2枚と冷凍のうどんが2玉入っていた。

「うどん!うどん!」

ぴょんぴょん飛び跳ねてはしゃぐユリ子の笑顔を見ると、オカジマは優しい気持ちになれた。

「ユリ子、お前はにーちゃんが絶対守ってやるからな」

ユリ子の笑顔に、オカジマはいつもそう誓っていた。

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