サイレントナイト～赤くて静かな夜～

二階のユリ子の部屋では、シズカがまだ眠っている。

「ユリ子は帰ってこねえから、好きに使えよ」

シズカにはそう言ったものの、オカジマは釈然としなかった。

死んだ母親と同じ名前を名乗るシズカは、 なぜうちを知っていたのか。

なぜ丸一日、涼しい顔をしてオカジマを待っていたのか。

なぜ、オカジマのこともユリ子の名前も知っているのか。

そしてシズカが繰り返し発する、「家族」とは何なのか…


メールの着信音で、オカジマは我に返った。

姫芽だった。

「オカっちおはよ～
夜勤終わった～
一日目からちょー疲れた↓↓

眠気がまじ限界だから、今日は姫芽のおうちに帰ります☆

オカっち大好き(^з^)-☆

若干二日酔いが残る↓↓ひめたんでした☆」

携帯を閉じると、オカジマはふっと安堵のため息をついた。

シズカを泊めたことを姫芽が知ったら、めんどくさいことになりそうだ。

オカジマは、昨日の晩、シズカと過ごした時のなんとも言えない安らいだ気持ちが忘れられなかった。