サイレントナイト～赤くて静かな夜～

ふいに身の回りの空気が冷たくなった気がして、ユキオは身震いをした。思考が現実に引き戻される。

虚ろな顔を上げると、周囲は薄暗い半円のドームに囲まれている。壁一面に描かれたスプレーの落書きが目にはいる。
いつのまにか、旧道のトンネルに入っていた。

途端に、ユキオの脳裏に四ヶ月前の嫌な思い出がよぎった。

「死んじまえよ…」

忌々しそうに舌打ちをして、トンネルの冷たい壁に手をついてフラフラと歩き出したその時、
言い知れぬ不快感が再びユキオを襲った。

「ああ？」

酒臭い臭気を口から吐き出し、ユキオが首を後ろにねじった、次の瞬間。

鈍い感触が頭に落ち、目の前がプツンと真っ暗になった。

それが、ユキオの最後の記憶だった。

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