サイレントナイト~赤くて静かな夜~
「オカジマ、お待たせ」

駐車場のバイクに座ってタバコを吸っていたオカジマは、細い声に首を傾けた。

ユリ子の青いワンピースを身につけたシズカが、相変わらずのどこかぼんやりとした笑顔で立っている。

「行くぞ。乗れ」

「どこへ行くの?」

「飯食いに行くんだよ。

どうせ腹減ってんだろ」

シズカの小さな頭にすっぽりヘルメットをかぶせると、オカジマは勢いよくバイクのエンジンを入れた。

「しっかりつかまってろよ」

オカジマはシズカの細い腕を引っ張って、自分の体に回す。

スピードと共に冷たく変化する風。

自分の体にしがみつく小さな腕。

ユリ子もこんなかんじだったな…

壊れてしまいそうな細い体を背中に感じながら、オカジマはバイクのスピードを上げていった。



小さな町工場の路地では、走り去るバイクを鈍い光を放つ視線が追っていた。

「シズカ…見つけたぞ」

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