サイレントナイト~赤くて静かな夜~
「はい宗ちゃんとお嬢ちゃん、伊吹ラーメンお待ちどう」

豊城が、湯気のたつラーメンを2つ、座敷のテーブルに置いた。

「宗ちゃん、かわいい子連れてるねえ。
これはそこのかわいこちゃんにサービス」

豊城はシズカに笑いかけて餃子を一皿置いて行った。

「お前なあ、どこで調べたのか知らねえけどいくら家出だからって嘘は良くないぜ」

そういいながらも、オカジマはシズカの言葉が嘘だとは思えない自分がいた。

熱い塩キムチラーメンのゆげの向こうに、シズカの表情のない綺麗な顔が浮かぶ。

「本当だよ。シズカの二人目のお父さん。
だから、お父さんが死んだら岡嶋工業に行きなさいって教えてもらったの」

「二人目?」

「うん。本当のお父さんとお母さんは私が6才の時に死んじゃったの」

「死んだ?病気か?」

高鳴る動悸を押さえてオカジマはシズカの顔を見詰めた。

シズカはゆっくりと首をふってわずかに笑みを浮かべて口を開いた。

「お父さんがお母さんを殺しちゃったの。だから私がお父さんを殺したの」
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