サイレントナイト~赤くて静かな夜~
目に飛び込んできたのは、誰もいないいつものオカジマの部屋だった。
部屋に入ってなおも見回してみるが、布団にも、念のため開けてみた押し入れにも、人の姿は見えない。
「なんだよ」
姫芽がため息をついたその時。
「誰だてめえ」
荒々しい声に、姫芽は驚いて後ろを振り向いた。
「出てけよクソババア」
部屋の入り口にいたのは、小柄な少女だった。
派手な化粧の下の怒りに満ちた顔は、よく見ればまだあどけない。
「はあ?
誰に向かって口きいてんのよ」
姫芽も負けじとにらみ返す。
「クソババア。人んちに勝手に上がり込んで偉そうなんだよ」
「人んち?」
世の中の全てを憎んでいるような眼差しを向ける少女の顔を、姫芽はよく見た。
「あんた、ユリ子ちゃん?」
少女はその言葉にまぶたを少し動かしたが、すぐにいっそう憎々しげな眼差しを姫芽に向けた。
「気安く呼ぶんじゃねえよクソババア。死ね。」
姫芽は確信した。
オカジマが見せてくれた写真とはずいぶん印象が違うが、目の前にいるのはオカジマの実の妹のユリ子に間違いがないだろう。
「ユリ子って妹がいるんだよ。
昔はかわいかったんだよな。でも施設に入ってから一気にグレやがってよ…
それでも、かわいいやつなんだけどな」
ある日、ふとオカジマがもらした言葉を、姫芽ははっきりと覚えていた。
「ユリ子ちゃん、ごめん、勝手に入って来ちゃって。いるって思ってなくてさ。」
「てめえ…看護婦だろ?」
ユリ子の言葉に、姫芽は思わず高揚した。
「そうだよ。知ってるなんて嬉しい。
ほら、姫芽わりと毎日来るんだけど、ユリ子ちゃんと会うの初めてだよね?」
途端、ユリ子の顔が狂ったようにつり上がった。
部屋に入ってなおも見回してみるが、布団にも、念のため開けてみた押し入れにも、人の姿は見えない。
「なんだよ」
姫芽がため息をついたその時。
「誰だてめえ」
荒々しい声に、姫芽は驚いて後ろを振り向いた。
「出てけよクソババア」
部屋の入り口にいたのは、小柄な少女だった。
派手な化粧の下の怒りに満ちた顔は、よく見ればまだあどけない。
「はあ?
誰に向かって口きいてんのよ」
姫芽も負けじとにらみ返す。
「クソババア。人んちに勝手に上がり込んで偉そうなんだよ」
「人んち?」
世の中の全てを憎んでいるような眼差しを向ける少女の顔を、姫芽はよく見た。
「あんた、ユリ子ちゃん?」
少女はその言葉にまぶたを少し動かしたが、すぐにいっそう憎々しげな眼差しを姫芽に向けた。
「気安く呼ぶんじゃねえよクソババア。死ね。」
姫芽は確信した。
オカジマが見せてくれた写真とはずいぶん印象が違うが、目の前にいるのはオカジマの実の妹のユリ子に間違いがないだろう。
「ユリ子って妹がいるんだよ。
昔はかわいかったんだよな。でも施設に入ってから一気にグレやがってよ…
それでも、かわいいやつなんだけどな」
ある日、ふとオカジマがもらした言葉を、姫芽ははっきりと覚えていた。
「ユリ子ちゃん、ごめん、勝手に入って来ちゃって。いるって思ってなくてさ。」
「てめえ…看護婦だろ?」
ユリ子の言葉に、姫芽は思わず高揚した。
「そうだよ。知ってるなんて嬉しい。
ほら、姫芽わりと毎日来るんだけど、ユリ子ちゃんと会うの初めてだよね?」
途端、ユリ子の顔が狂ったようにつり上がった。