サイレントナイト～赤くて静かな夜～

「ユリは嬉しくねえよばか野郎！死ね！」

喉がつぶれそうなくらいの大声で叫ぶと、ユリ子は扉を蹴飛ばして飛び出していった。

荒々しく階段を降りる足音と、玄関の戸が激しく閉まる音がすると、部屋の中は嵐の後のように不気味に静まり返った。

だれもいなくなった部屋で、姫芽はしばし呆然とする。

初めて会ったオカジマの妹、ユリ子は悪意に満ちていた。

小さな体で膨らみ続けた悪意は行き場を失い、ぶつけることでしか発散させる術をもたない。

姫芽は弾かれるように部屋の窓とカーテンを開けた。

荒い呼吸を静めるために、何度も息を吸ってはく。

「なんなのあれ…オカっちに全然似てないし…」

「誰が似てないんだよ」