サイレントナイト~赤くて静かな夜~
「いた?」

「うん」

姫芽はばつが悪そうに首をすくめて頷いた。

「ユリ子ちゃん。…でも姫芽のこと見たら超キレてー。まじキレすぎだから姫芽もなんにもできなくてー。」

姫芽は早口でまくしたてた。
早口になると語尾が極端にのびて上がる。

「ユリ子が来たのか?」

オカジマの表情から焦りがすっときえる。
姫芽は、シズカがここにいたことにはどうやら気付いていないようだ。
オカジマは姫芽に気付かれないよう、内心ほっと胸を撫で下ろす。
と同時に、姫芽の口から出てきた意外な名前に耳を疑う。

「ユリ子が来たのか?何をしに?いつまでいた?」

「何をしにって…姫芽知らないし…ついさっきまでいたよ」

姫芽の言葉を最後まで聞かずに、オカジマはきびすを返す。
今なら間に合うかもしれない。ユリ子を見付けられるかもしれない。
部屋を飛び出そうとしたオカジマの腕をつかんだのは、姫芽だ。

「ちょっとオカっちどこ行くわけ?姫芽がいるんだけど。放置あり得ないから。」

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