サイレントナイト~赤くて静かな夜~
オカジマが何か言いかける前に、姫芽はオカジマの腕を引いて強引に部屋に連れ戻した。

「なにするんだよ」

「姫芽と他の女とどっちが大切なわけ?」

込み上げてくる苛立ちを、姫芽はオカジマにぶつけた。
初めて会うユリ子にいわれのない怒りをぶつけられ、しかもあんな小娘相手に自分は言われるがまま、何もできなかった。

あんな子、可愛さの欠片もないただの醜いガキ。
なんで姫芽よりあんなガキを優先するわけ?

「お前なに急にキレてんだよ」

オカジマは、めんどくさそうに姫芽をなだめようとする。
その行為が、姫芽をいっそう苛立たせた。

姫芽は洋服が散乱した布団の上にオカジマを押し倒す。

「やめろって」

姫芽は、オカジマの口を自分の唇で強引にふさぐ。

そういえば、なんで誰も使っていないはずのこの部屋には、布団がしいてあるんだろう?
オカジマのTシャツを胸までたくし上げながら、姫芽はふと疑問に感じた。
胸を内側から握られたような、不快な感覚を覚える。

けれど、次の瞬間、オカジマの舌が姫芽の舌に絡みつき、姫芽の頭から余計な考えはするすると溶けて流れていってしまった。

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