サイレントナイト~赤くて静かな夜~


オカジマが豊城の店、「伊吹」に現れたのは昨夜、22時頃だった。

「いらっしゃい、」

ゆで上がったラーメンの麺を、黄土色の豚骨スープの入った丼にうつしながら、豊城は威勢のよい声をだす。

「今日はカウンターでええな?」

いつものように振り替える、その先にいるオカジマは、こわばった表情で席に座ろうとしない。

隣には、つい昨日みた見慣れない色白の少女がいる。

「おっちゃん、わりい。」

オカジマは、おもむろに厨房に入り込んで豊城に面とむかう。

「お、おう?どうした?」

「おっちゃん、わりい!
何も言わねえで、こいつを一晩みてくれ!」

そう言って、オカジマは豊城に頭を下げた。

「あ、ああ?あ…あのなあ!」

状況が呑み込めないまま、立ち尽くす豊城が言い終わらないうちにオカジマは少女に言い聞かせた。

「いいか、シズカ。このオヤジはいいオヤジだ。
一晩お前の面倒みてくれるからな。
言うこときけよ。
また迎えにくるからな。」

「おぉい!オカジマちゃん!」

豊城が言い終わる前に、オカジマはあわただしく店を出て行った。

残された豊城の前には、くりくりとした二重の瞳でまっすぐに豊城を見つめるシズカがいるだけだった。


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