白桜~伝説の名刀と恋の物語~【完】
着いてみて、常篤の屋敷があまりに質素なことに紗枝は驚いた。それと同時に好感も覚えたのであるが。屋敷といっても名ばかりで、普通の農家にちょっとした垣根があって、家の作りがひとまわり大きい、その程度のものであった。

「こちらにございます。」
紗枝のまわりをつかず離れず、姿を見せずに警護していた佐助が言った。
「仔細あって、姿を見せられぬ無礼をお許しください。では。」
そう声がすると佐助はいずこかへ去った様子であった。

屋敷の中はいたってシンプルで、玄関口を入るとすぐにもう常篤の部屋があった。
「どうぞ、紗枝殿。」
笑顔で常篤が紗枝を部屋に招きいれた。
「・・・はい。」
なにせあのようなことがあった直後である。
紗枝は恥ずかしさと嫌悪感にさいなまれて顔すらあげることができなかった。

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