白桜~伝説の名刀と恋の物語~【完】
「紗枝殿・・・」
やさしい声で常篤が切り出す。
「はい。」
「早ければ明日・・・私は諏訪を斬ります。」
「え?」
紗枝はあまりのことに一瞬気が動転した。
「諏訪様を・・・」
「はい。」
「私ならば・・・平気にございます。どのような陵辱を受けようとも・・・一度夫をなくした身。私が耐えればすべてうまくいくのですから・・・」
そういいながらも、紗枝は諏訪から受けた陵辱を思うと身が震えるのであった。
「いえ、そのような理由で斬るのではありません。明日の松代のためです。」
「は・・・」
紗枝はあまりに小さな私怨で物事を見ていた自分が恥ずかしくなった。
「そうでございますね。」
「諏訪の政は・・・大局から見ればすばらしきものなれど・・・そこに大きな民の犠牲を伴います。」
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