白桜~伝説の名刀と恋の物語~【完】
しかし、今日、この朝。
もう我慢したりおさえたりする必要は無くなったのだ。
(この上は…この命尽きるまで民の心を…紗枝殿の屈辱を代弁する怒り狂った野獣となって暴れようぞ!)

それに呼応するかのように白桜の刀身がキラリと光る。
「佐助!」
刀の手入れを終えた常篤が佐助を呼ぶ。
「はっ!」
「本日、私は城へ入る前の諏訪が我が領内を通るおりに斬る。そなたは諏訪の動向を随時報告せよ。」
「御意。」
そういうと佐助は体をひるがえし、駆けていった。

(紗枝殿…)
唯一心残りがあるとすればそれであった。女は男を強くもし、弱くもする。
(しかし、迷いは剣をにぶらせる。)
常篤はそれを振りきるかのように白桜を二度三度と振り抜いた。
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