白桜~伝説の名刀と恋の物語~【完】
ようやく紗枝が到着したころ、『その場所』にはもはや常篤の姿はなかった。ただ道に飛び散った血がその惨劇の凄惨さを物語っていた。
「常篤様・・・」
それは、常篤の血ではないと思いはするものの、紗枝は不安を隠しきれずに思わず常篤の名を口にした。
そこへ佐助が顔を出した。
「佐助様!常篤様は?」
紗枝があわてて聞く。
「常篤様は、私が到着したときにはすでに諏訪の首を取られ、今は屋敷に戻られました。」
「お怪我は?」
「全くございません。まさに鬼神のごとき強さだったとのことにございます。」
「そうですか・・・」
また紗枝の目から大粒の涙がこぼれる。
いくら悪行の限りを尽くし、藩政をほしいままにし、紗枝をも陵辱した人間とは言え、松代藩の城代家老である。これを問答無用に斬ったとあれば、常篤が切腹、斬首になることは間違いあるまい。
刹那・・・まさに紗枝と常篤の心と身体が通い合ったのは一瞬だったのである。人間ほどの短く儚い生命しか持たない存在でも、その一生に対して『一夜』というのはあまりに短い。
(常篤様・・・これも運命なのですか?もし人に常篤様のいうような『生きる意味』で『運命を変える力』があるのなら・・・私はどうすればいいのですか?)
「常篤様・・・」
それは、常篤の血ではないと思いはするものの、紗枝は不安を隠しきれずに思わず常篤の名を口にした。
そこへ佐助が顔を出した。
「佐助様!常篤様は?」
紗枝があわてて聞く。
「常篤様は、私が到着したときにはすでに諏訪の首を取られ、今は屋敷に戻られました。」
「お怪我は?」
「全くございません。まさに鬼神のごとき強さだったとのことにございます。」
「そうですか・・・」
また紗枝の目から大粒の涙がこぼれる。
いくら悪行の限りを尽くし、藩政をほしいままにし、紗枝をも陵辱した人間とは言え、松代藩の城代家老である。これを問答無用に斬ったとあれば、常篤が切腹、斬首になることは間違いあるまい。
刹那・・・まさに紗枝と常篤の心と身体が通い合ったのは一瞬だったのである。人間ほどの短く儚い生命しか持たない存在でも、その一生に対して『一夜』というのはあまりに短い。
(常篤様・・・これも運命なのですか?もし人に常篤様のいうような『生きる意味』で『運命を変える力』があるのなら・・・私はどうすればいいのですか?)