白桜~伝説の名刀と恋の物語~【完】
ちょうどそのとき、諏訪の屋敷から血相を変えて走ってきた福田次郎の一行が到着した。
「諏訪様!」
諏訪の斬られた姿を見つけて、次郎がかけよる。
そして、その傍らに、これもすでにこときれている石州の姿があった。
「石州・・・そなたまで・・・」
次郎の手が震えている。
「あと少し・・・あと少しで・・・新しい時代が見えたものを!」
次郎が空を仰いで崩れ落ちた。
次郎も諏訪のやり方すべてに心服していたわけではない。賦役で夫を亡くした妻や娘は遊女にして売り飛ばしてしまえ、などと言い出したときには、さすがの次郎も
(この方は長くない・・・)
と思いもしたものである。
しかし、海外をも視野に入れて、日本を変えていこうとするその諏訪のやり方には、当時にない『力』を感じた。だからこそ、首をかけて諏訪を支え、そして諏訪に対してはリスクを背負ってきた自分である。
(ついに・・・終わったか)
崩れ落ちる次郎の目に紗枝の姿が映る。
「・・・紗枝・・・そなたがもしかして・・・?」
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