白桜~伝説の名刀と恋の物語~【完】
紗江のぬくもりを引き離し、常篤は歩き始めた。
「常篤さま!」
紗江がもう一度叫ぶ。
常篤が振り返って、優しく涼しい笑顔を見せる。
「私には・・・見えます!常篤様の望む未来が!いまはつらく苦しい日々でも、『未来』はきっと輝いていて・・・きっと常篤様の命がこの藩を、日本国を明るく照らし出すのが・・・見えます!」
常篤はそれに小さくうなずくと、あとは振り返ることもなく、まっすぐに城に向かって歩いていた。
もちろん、諏訪殺しの下手人として、城に自ら裁かれるために、である。最後に自分が歩く道に、紗枝がいてくれたことに常篤は深く感謝していた。
(最後に会えて・・・本当によかったです。いつまでもお元気で紗枝殿・・・いや・・・紗枝。)
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