白桜~伝説の名刀と恋の物語~【完】
(なぜ頼重が…?)

幸民は江戸で暮らしていたために藩内の情勢は、まったく一方的な内容しか知らされなかったのである。

この冬に出た大量の死者についても、ただ
『この度の寒波により民多く死す。さらに秋の凶作により餓死者も多数でるものの、諏訪殿の計らいによってこれを最小限にとどむ』といった程度のものであった。

やはり幸民にしても、そんな忠臣であった諏訪が命を狙われるなどというのは不可解この上なかったのである。
(どちらにしても、早馬で頼重に伝えておかねばなるまい。)
幸民はそう思い、急ぎ頼重に向けて使いを出した。

しかし、この時代のこと。一日足らずでは松代(今の長野県)まで馬の足が届くはずがなく、この警告は間に合わなかったのである。
なぜ、このような情報を御庭番衆が掴んでいたのかは不明であり、またなぜこの時期に幸民にこの情報をリークしたのかも幸民にしては謎であった。
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