白桜~伝説の名刀と恋の物語~【完】
(なぜ家中の意見がまとまらないのだ?即斬首でよいではないか。)

自分の意見を仰ぐ必要性が全く理解できないのである。もちろん、そこには諏訪の政に対する反対勢力があり、さらには諏訪が斬られたことを、何よりも藩内の民が喜んでいるという幸民に知らされていない現実があったから仕方ない。

このとき家中の意見は見事にまっぷたつに割れていた。

旧諏訪の家臣や親交が深かった家臣などは、即刻打ち首にしなければ、藩としての対面が保てないとする一味である。
これに対して、諏訪の急速かつ大義のためには農民の命など気にしてはならないとするやり方に、大きな反感を持っていた家臣の一味もほぼ同数あった。彼らは常篤を、圧制から藩を開放した『真の忠義の志』として立てよう、というのであった。

よって、常篤が出頭して以来、城内ではいたるところで白熱した議論がなされ、なかなか結論が出ない膠着状態にあったのである。
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