白桜~伝説の名刀と恋の物語~【完】
さらに、諏訪が斬られたという一報が届いた翌日の七日、今度は高村仁左衛門の領民の代表というものが到着した。

彼の手には真っ赤に染まった血判状が握られており、幸民が常篤を処罰するのであれば、領民すべて自害して果てるという壮絶なものであった。

これにはさすがの幸民も驚かされずにはいられなかった。
(これは・・・。)
そこに来て、ようやく幸民はあまりにうまくいきすぎていた藩の財政改革の弊害を思い知ることになったのである。

これだけの財政問題をたかが数年で解決してしまったのだ。それだけの犠牲が出ていないはずがない。それに気付かなかった自らの藩主としての迂闊さにも腹が立った。

幸民は決して暗愚な藩主ではない。かといって先祖の真田幸村などには及びもしない器である。そのことは当の本人が一番自覚していた。
そんな中で幼少より親交があり、鋭敏でなる薩摩島津斉彬公が江戸に戻っていると聞いた幸民は、島津公に相談してみることにしたのである。
しかし…島津公は政務に追われており、ようやく話ができたのはさらに三日のちのことであった。この三日かかったことがいずれ常篤の運命の明暗をわけることになるのである。
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