白桜~伝説の名刀と恋の物語~【完】
「なぜ、ワシらがそれを害するのじゃ?」
「さあ・・・それは・・・」
常篤は、あえて言葉をつながなかった。
「偽とはいえ、高村仁左衛門があの屋敷にて隠棲している、となれば、私を支持する民もこれからの藩政におとなしく従うでありましょう。」
「しかし、常篤殿を無罪で放免したとあっては、我等家臣の面目がたちませぬ。」
「だから『本物の私』は、今ここで腹を切ると申しておるのです。」
驚くほど強い語気を込めて常篤がその家臣の一人をにらむ。
その家臣がすくみあがって後ずさった。
「そのとおり。この一件は、我ら諏訪家の面目だけの問題じゃ。ここで常篤殿を切り捨てて、民の怒りを買うのはうまくない。我等は本物の常篤殿が我等に対する侘びで腹を斬ったのを見届けた。それで良いではないか。」
諏訪義正が、はっきりと意見を述べ、この場をまとめた。
「さあ・・・それは・・・」
常篤は、あえて言葉をつながなかった。
「偽とはいえ、高村仁左衛門があの屋敷にて隠棲している、となれば、私を支持する民もこれからの藩政におとなしく従うでありましょう。」
「しかし、常篤殿を無罪で放免したとあっては、我等家臣の面目がたちませぬ。」
「だから『本物の私』は、今ここで腹を切ると申しておるのです。」
驚くほど強い語気を込めて常篤がその家臣の一人をにらむ。
その家臣がすくみあがって後ずさった。
「そのとおり。この一件は、我ら諏訪家の面目だけの問題じゃ。ここで常篤殿を切り捨てて、民の怒りを買うのはうまくない。我等は本物の常篤殿が我等に対する侘びで腹を斬ったのを見届けた。それで良いではないか。」
諏訪義正が、はっきりと意見を述べ、この場をまとめた。