白桜~伝説の名刀と恋の物語~【完】
「では・・・。」
「うむ。これから、あの屋敷には絶対に手は出さず。厚く遇することを約束しよう。」
義正がそういって、周囲の家臣を見回す。
誰も反対はない様子であった。
それを見ると常篤は、
「諏訪殿、介錯をお願いいたします。」
そういうと、迷わず腹を切って果てた。
常篤、齢(よわい)四十の春であった。
その頃城門では深夜にもかかわらず、激しく門を叩く者があった。
「失礼つかまつる!諏訪義正殿はおられるか!」
男は夜をついで走り続けてきたにもかかわらず、最後の力を振り絞って大声をあげた。
門番があわてて城門を開き、彼に走り寄る。彼はすでに息絶えていたが、その手にはしっかりと江戸屋敷にある『真田幸民』の書状を握り締めていた。
もちろん、これは常篤の処刑を断念するように、との命が書かれたもので、江戸にあった幸民が急ぎ急使を走らせたものであったのだが、わずか数分の時間差をもって、すでに常篤はこの世の人ではなくなっていた。
「うむ。これから、あの屋敷には絶対に手は出さず。厚く遇することを約束しよう。」
義正がそういって、周囲の家臣を見回す。
誰も反対はない様子であった。
それを見ると常篤は、
「諏訪殿、介錯をお願いいたします。」
そういうと、迷わず腹を切って果てた。
常篤、齢(よわい)四十の春であった。
その頃城門では深夜にもかかわらず、激しく門を叩く者があった。
「失礼つかまつる!諏訪義正殿はおられるか!」
男は夜をついで走り続けてきたにもかかわらず、最後の力を振り絞って大声をあげた。
門番があわてて城門を開き、彼に走り寄る。彼はすでに息絶えていたが、その手にはしっかりと江戸屋敷にある『真田幸民』の書状を握り締めていた。
もちろん、これは常篤の処刑を断念するように、との命が書かれたもので、江戸にあった幸民が急ぎ急使を走らせたものであったのだが、わずか数分の時間差をもって、すでに常篤はこの世の人ではなくなっていた。