白桜~伝説の名刀と恋の物語~【完】
最初に輿を見たときは、紗枝も秀五も喜んでそれに駆け寄ったが、その中を見たとき、もう二人は放心状態となって、何も口にすることはできなかった。
佐助がその亡骸を預かり、屋敷の広間に安置する。
(常篤様・・・申し訳ありません。この役立たずの部下をお許しください・・・)
常篤の亡骸には、家老諏訪義正の書状がつけられてあった。
『忠臣高村仁左衛門常篤殿、自ら望み切腹す。その覚悟見事なり。このこと、江戸にある殿に漏れなく報告し、常篤殿の死を国をもって悼む。常篤殿の民への熱き思いに敬意を表する。』
とあった。そして、
『尚。常篤殿と佐助殿の間にあった、かねてよりの約定、間違いなく果たされますよう、常篤殿のたっての願い、どうかお聞き届けくださいますよう。生前の約定により我等今後この屋敷には一切かかわらぬことを約定いたす。』
と添えてあった。
(常篤様・・・)
佐助はその亡骸を抱きしめて泣いた。
しかし、しばらくすると、佐助は顔や身体の間接などを外し、動かし、化粧を始めた。
みるみるうちにその姿は常篤に瓜二つとなっていたのである。
女子や子どもにまで身を操ることのできる佐助にとっては、常篤に化けることなど造作もないことであった。
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