白桜~伝説の名刀と恋の物語~【完】
事情を知った紗枝の両親も、何度かこの墓を訪れて、紗枝の説得を試みたが、まったく効果が無かった。
というよりも、『心がここにない』のである。
「きっと紗枝の心は今も常篤様のそばにあるのですね。」
紗枝の母はそういって、そっと涙を袖で拭いた。
「そうだな。ワシらにできるのは、この不憫な、不幸を背負った娘が今は幸せに包まれていることを祈るだけじゃ。」
父親がそんな母親の肩を抱いて言う。
「今、紗枝はきっと幸せですよね?」
紗枝の母が言うと、父がだまってうなずく。
その二人の視線の先には、墓を抱くようにして座りこむ紗枝の姿があった。小鳥達が紗枝の肩や膝に止まり、美しいさえずりが聞こえる。紗枝のまわりには暖かい日差しが差し込み、紗枝の少しやつれた端正な顔を照らす。
「紗枝殿は今やっと、永遠の幸せを手にいれられたのでしょう。愛する人とともに過ごす安息の日々・・・」
寺の住職は、まもなく命を落とす紗枝の姿をそう評した。
というよりも、『心がここにない』のである。
「きっと紗枝の心は今も常篤様のそばにあるのですね。」
紗枝の母はそういって、そっと涙を袖で拭いた。
「そうだな。ワシらにできるのは、この不憫な、不幸を背負った娘が今は幸せに包まれていることを祈るだけじゃ。」
父親がそんな母親の肩を抱いて言う。
「今、紗枝はきっと幸せですよね?」
紗枝の母が言うと、父がだまってうなずく。
その二人の視線の先には、墓を抱くようにして座りこむ紗枝の姿があった。小鳥達が紗枝の肩や膝に止まり、美しいさえずりが聞こえる。紗枝のまわりには暖かい日差しが差し込み、紗枝の少しやつれた端正な顔を照らす。
「紗枝殿は今やっと、永遠の幸せを手にいれられたのでしょう。愛する人とともに過ごす安息の日々・・・」
寺の住職は、まもなく命を落とす紗枝の姿をそう評した。