白桜~伝説の名刀と恋の物語~【完】
そして今、そんな常篤を悩ませる重大な問題があった。それは、現在の藩内の治安の悪化とわいろの蔓延、さらに度重なる凶作による村民の窮状であった。

常篤自らも何度となくこのことを上申し、まずは高い年貢を引き下げ、さらには藩主真田幸民公においても質素に勤めていただくよう、何度も書状をしたためたのであるが、当時わいろ無しでこれが藩主の耳に届くことは当然なく、単なる数十石の庄屋の身分でこのような状況を打開することは至難の業であった。

むしろ逆に常篤のほうが、これを握りつぶす役人側から、
「お主のやり方がぬるいのだ。ぬるいから農民ごときになめられて、下からつつかれるのだ。」
と責められる始末で、場合によっては、それを『常篤の怠慢』として、お家取り潰しの沙汰があることすら十分に考えられる状況であった。

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