白桜~伝説の名刀と恋の物語~【完】
「失礼ですが・・・またお会いできますか?」
尋ねる常篤に、紗枝は、その熱いまなざしに耐えかねるように目を伏せ、
「いえ、実はついさきほど縁談がまとまりましたゆえ。」
と短く言った。
「そうですか・・・それは残念です。」
常篤はそれ以上、紗枝に聞くこともなく、軽く一礼をし、その場を立ち去ろうとした。
「あのぅ・・・」
今度はこれを紗江のほうが呼び止めた。
「いかがなされましたか?」
(もう少し・・・早くお会いしたかった・・・)
紗枝も常篤と同じく、相手の立ち振る舞いやあふれ出す人柄に尋常ではない好意を覚えていたのである。
「・・・いえ、何も・・・・」
「そうですか。では・・・」
常篤の姿が見えなくなるまで、紗枝は深ぶかと頭を下げて見送っていた。
これに常篤は一瞬気付き、振り返って何かを言おうとしたのであるが、何も言わず、再び歩き去っていった。おそらくもうひと時でも早く出会っていれば、晴れて幸せな夫婦となれたかも知れぬ二人の縁は、もっとも悲惨で残酷な形で触れ合ったのある。
尋ねる常篤に、紗枝は、その熱いまなざしに耐えかねるように目を伏せ、
「いえ、実はついさきほど縁談がまとまりましたゆえ。」
と短く言った。
「そうですか・・・それは残念です。」
常篤はそれ以上、紗枝に聞くこともなく、軽く一礼をし、その場を立ち去ろうとした。
「あのぅ・・・」
今度はこれを紗江のほうが呼び止めた。
「いかがなされましたか?」
(もう少し・・・早くお会いしたかった・・・)
紗枝も常篤と同じく、相手の立ち振る舞いやあふれ出す人柄に尋常ではない好意を覚えていたのである。
「・・・いえ、何も・・・・」
「そうですか。では・・・」
常篤の姿が見えなくなるまで、紗枝は深ぶかと頭を下げて見送っていた。
これに常篤は一瞬気付き、振り返って何かを言おうとしたのであるが、何も言わず、再び歩き去っていった。おそらくもうひと時でも早く出会っていれば、晴れて幸せな夫婦となれたかも知れぬ二人の縁は、もっとも悲惨で残酷な形で触れ合ったのある。