白桜~伝説の名刀と恋の物語~【完】
しかし、ここ数年は、ほとんどが枯れた稲穂にまじって、ようやくなんとか実をつけた稲穂がさびしく首をたれているだけである。
(もはや・・・限界まで来ている。)
今回の追加の上納は、領民から取り立てた体(てい)にして、常篤はすべての私財をなげうった。
村人たちはこのことに深く感謝をしたが、来年も再来年も・・・同じような搾取があるのだと思うと気が重かった。

それ以前に、その追加上納がなくとも、すでに村人たちの食料は底をつき・・・冬を待つまでもなく、餓死者が大量に出ることは火を見るよりあきらかであった。

(収穫の秋だというのに・・・)
常篤の苦悩はさらに深まっていくのであった。
そんなさなか、
(そうじゃ。諏訪様の土地を見聞してみよう。)
常篤はそのことに思い当たった。
このような無茶な改革をしている家老の所領を見てくれば、何かがわかるかもしれない。
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